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第3章 ハルシネーションの正体
PIVOT-SR
第3章 ハルシネーションの正体 ~AIが自信満々に間違える理由~
◆ はじめに
AIを使うときにもっとも注意すべき現象、それがハルシネーション(幻覚)です。
「ハルシネーション」とは、AIがもっともらしく見える“間違った答え”を出してしまう現象のことです。
AIに慣れていない人ほど、「AIが答えているから正しいはず」と思いがちですが、これは大きな落とし穴です。
この章では、ハルシネーションがなぜ起こるのか、そしてどう付き合っていけばよいのかをわかりやすく解説していきます。
◆ 1. ハルシネーションとは?
ハルシネーションとは、
AIが実際には存在しない情報を、さも本当のように答えてしまう現象のことです。
見た目はとても自然で正しそうに見えますが、事実としてはまったくのウソというケースもあります。
そのため、AIの答えをそのまま信じてしまうと、大きなトラブルにつながる可能性があります。
◆ 2. なぜハルシネーションは起きるのか?
ハルシネーションが起こる最大の理由は、生成AIの仕組みにあります。
AIは、「正しい答え」を探しているのではなく、
「もっともらしい答え」を予測して作っているだけです。
AIは過去の膨大なデータを学習しているとはいえ、
「これは本当に正しいか?」を確認する力は持っていません。
そのため、たとえば「この質問にはこういう答えが多かったから」と、
実在しない情報を堂々と答えることがあるのです。
🔍 補足:AIの学習には「教師あり学習」と「教師なし学習」がある
- 教師あり学習:正解ラベル付きのデータを使って学ぶ。例:画像と「これは犬」という答え。
- 教師なし学習:正解ラベルのないデータから、パターンや構造を見つける。
- 生成AIの多くは、教師なし学習で「文章のパターン」を学んでいる
→ だから、「正しいかどうか」ではなく「ありそうかどうか」で判断してしまう。
◆ 3. ハルシネーションの具体例
実際に、どんなハルシネーションが起きるのでしょうか?
以下は、よくある例です。
【一般的な例】
- 実在しない法律をそれらしく説明する
- 架空の人物を本物のように紹介する
- 存在しない統計データを提示する
- 過去に起きていないニュースをでっち上げる
【人事業務で起こりやすい例】
-
架空の資格や試験名を作り出してしまう
- 例:「日本人事適正評価士」という、実在しない資格を紹介
-
ありそうで実在しない求人用語を使ってしまう
- 例:「特別スキル雇用助成金」という制度名をでっち上げる
-
応募者の架空の経歴をもっともらしく脚色する(特に自動文章生成時)
- 例:「過去に◯◯賞を受賞した」など、事実無根の実績が付加される
- 雇用契約に関する誤情報(法律的に誤った雇用条件)を生成する
こうした間違いは、人事の仕事においては非常に危険です。
求人票や面接用の資料などにAIの生成結果をそのまま使ってしまうと、法的トラブルに発展する恐れもあります。
◆ 4. ハルシネーションを見抜くコツ
ハルシネーションを完全に防ぐ方法はありません。
「AIは間違えるもの」という前提で使うことが大切です。
具体的には、次のような基本の習慣を身につけましょう。
-
必ずファクトチェック(事実確認)する
→ AIの答えをネット検索や公式サイトで確認する -
出典が示されていない情報は信用しない
→ 「出典は?」とAIに聞くことも有効 -
AIの答えは“たたき台”として使い、自分で判断する
→ 最初から「答え」ではなく「参考」と考える
◆ 5. ハルシネーションを起こさないコツ
ハルシネーションを完全にゼロにすることはできませんが、
プロンプト(指示文)の工夫でリスクを減らすことができます。
プロンプト作成のポイント
-
事実だけを書いてください、と明示する
→ 例:「事実に基づいて答えてください。推測は書かないでください。」 -
わからないときは“わからない”と答えるよう指示する
→ 例:「不明な場合は『わかりません』と答えてください。」 -
出典の提示を求める
→ 例:「根拠となる出典やURLがあれば必ず示してください。」 -
回答範囲を限定する
→ 例:「2020年以降の公式発表に基づいて答えてください。」 -
形式や観点を指定する
→ 例:「箇条書きで簡潔にまとめてください。」
「メリットとデメリットを分けて答えてください。」
💡 補足コラム:なぜ形式指定でハルシネーションが減るの?
-
余計な想像を抑えられる
- 曖昧な指示だと、AIは空白を埋めようとして“もっともらしい作り話”をしがち。
- 枠を与えることで、その範囲に沿った答えに限定される。 -
情報整理の軸を与えられる
- 「比較」「箇条書き」など形式を決めると、AIは分類・整理に注力する。
- 結果として、推測よりも確実な情報を優先しやすくなる。 -
人間が確認しやすくなる
- 箇条書きや区分け形式は、誤情報を見抜くのが容易。
- “減らす”だけでなく“気づきやすくする”効果がある。
◆ 6. まとめ:AIは「必ず間違えるもの」として付き合おう
AIは非常に便利な道具ですが、必ず間違えることがあるという事実を忘れてはいけません。
特に人事の現場では、人の人生に関わる重要な情報を扱う場面が多いため、
AIの生成した情報をそのまま使うことは絶対に避けるべきです。
大切なのは、
「AIの答えは必ず自分で確認する」
という意識を持つこと。
これこそが、AIを安全に活用するための、もっとも基本的で重要なスキルです。
次章では、「AIを正しく使いこなす心構え」として、
質問の仕方(プロンプトの工夫)や、日常での活用方法について学んでいきます。